享保年間、新田開発の時代になると用水が引かれ、崖上（ハケ上）（本町地区）にまで畑は広がります。
なお、これ以前にも田畑を広げようとする試みはあったようで、今は橋の名でしか残っていませんが、小字名「押切間」は、野川をせき止め、府中方面に流れを変えようと堰（丘）を作ったものの、大水で堰が押し流されたことにちなむ跡名です。また、小字名「殿ケ谷戸」は、おそらく今の殿ヶ谷戸庭園と東側の丸山周辺の地形から殿＝おしりのかたちをした谷戸に由来するのでしょう。橋の名に残っている「花沢」は、日立中央研究所庭園からも想像していただけるように、湧水と沢、花が咲き乱れていたと思われます。「長谷戸」も貫井方面への長い谷戸が続くところからの名称で、小字名は「はせど」ではなく「ながやと」たったそうです。このように地形や歴史を色濃く残した小字名がいたるところありました。
明治22年に甲武鉄道（JR中央線）が開通、同年二村八新田が統合され、現在の国分寺市の原形となる新しい国分寺村が誕生しました。その後、川越鉄道（西武国分寺線）、多摩湖鉄道（西武多摩湖線）、東京砂利鉄道（下河原線）、府中との乗合馬車などが開通、国分寺駅は北多摩地区の交通の要衝となり、駅北側はそれにつれて発展、本町は「停車場前」と呼ばれていました。現在進行中の北口再開発によって、当時の面影は完全に姿を消し、新たな国分寺の顔とも言うべき駅北側の景観ができあがることでしょう。駅南側は、大正時代から江口（岩崎）、竹尾、高島、天野など大別荘が点在するのどかな田園風景が広がっていました。昭和31年、駅南口が開設され、さらに第一小学校が移転、昭和44年跡地が処分されて以降、北口に劣らない発展をとげ、今に至っています。