祥應寺の「児の手柏」

児の手柏は松と同様に常緑で葉を落とさず茂ることから「百木の長」(史記 亀策列伝)とか「命を地に受くるもの、ただ松柏のみ独り正しく、冬夏に青青たり」(荘子 徳充符篇)というように中国の古代書に登場する。日本では奈良時代に万葉集に詠まれ、平安時代には典薬寮によって児の手柏の種子(柏子仁)を漢方用として栽培されていた。

祥應寺の児の手柏は、享保11年(1726)に武蔵国分尼寺跡の北方に位置した伝祥應寺から現地に移植され、樹齢は600年以上、日本最大かつ最古で希少かつ貴重なものである。

児の手柏はもともと日本に自生しておらず、祥應寺の児の手柏は大昔に誰の手によって運ばれたのか、歴史的浪漫を感じうるものである。

平成27年(2015) 5月 吉日